カタクリ (ユリ科カタクリ属)別名(古名):カタカゴ
片栗 Erythronium japonicum

展示館前の広場とその奥の方にみられる、高さ20〜30cmの多年草です。植栽と思われる。
北海道、本州、四国、九州の明るい林内に群生することの多い植物です。

花は早春の3月〜4月。
スプリングエフェメラル(春のかげろう)という言葉をご存知の方も多いと思います。
春の妖精ともいわれ、春いち早く花が咲き、咲き終わってしばらくするととけるようになくなってしまうのです。
まさに春のかげろうのようだということなのです。

このような植物は他に、コシノコバイモ、エンゴサクの仲間、フクジュソウ、キクザキイチゲなどがありますが、これらは、春に落葉樹が葉を展開しないうちに葉を展開させ花も咲かせ、一年の光合成を1ケ月程度で終えてしまうのです。森が暗くなり始める頃にはもうフニャフニャになってしまうのです。
しかし、里山が放置されていると、落葉樹ではなく照葉樹がはびこってきますから、こういったスプリングエフェメラルはどんどん少なくなっていくのです。
人が利用してきた里山というのは、実はスプリングエフェメラルにとっては繁栄の拠点だったのです。ねいの里ではだんだん暗くなっていましたから、こういった植物は乱獲ともあいまってかなり少なくなっていました。でも、明るい森に変容していく過程で、少しずつ増えてくるものと期待しています。

このねいの里のカタクリの花は多くは植栽です。
およそ7〜8年間1枚の年を経て、2枚になってからやっと花を咲かせるので、まだ1枚の葉だけのものがかなり多く、今後に期待できます。

果実はさく果で、裂開して種子が落ちるのですが、この種子を蟻が運ぶのです。動物散布の一つですが、ちょっと面白いのは、この種子には小さな突起のようなもの(エライオソーム)が付いていて、この脂肪酸や炭化水素をの匂いが、自分たちのさなぎの匂いと間違えて巣に運ぶのだといわれています。また、一説には、このエライオソームに含まれる脂肪酸などを蟻たちが利用しているとも言われています。

万葉集にもでてくる「カタカゴ」はカタクリの古名・別名と言われています。
が、これには異説もあるようです。コバイモの仲間をさしていたのではとの見解もあります。
昔は、食糧になるものに早くから名前が付くことが多かったとされ、コバイモの方が球根もすぐ取れるし、
まさに片栗の形だというのです。まあどちらが本当かは分かりませんが、考えているとちょっとタイムスリップ気分が味わえますね。


2017年4月6日 こちらはほぼ満開 カタカゴの丘はもう少しです。




2004年4月3日 蕾のものも見えますが、花が開くと、左のように反り返るのです。


2004年4月3日 おっ!雌しべが伸びてきています。
始めはおしべに隠れているのですが、雌しべが成長してきたのですね。


2004年4月29日 若い果実 さく果となります。


2004年4月29日 若い果実でしたが、一つ勉強のために開いてみました。
種子の上部に小さな真っ白な突起のようなものがエライオソームです。まだ全体が白っぽいですね。



2004年5月29日 種子を持ってこられた方がいらっしゃいました。ご自分の山で採取したものだそうです。
ねいの里で播種するそうです。