ハクビシン
(MACACA FUSCATA)
生態について
食肉目のジャコウネコ科に属する動物で、四肢が短く、尾が長く、地上と樹上生活を行う。全身褐色で顔はやや黒い。ひたいから鼻にかけて大きな白帯があり、ハクビシン(白鼻芯)の名前もこれに由来する。東南アジアに広く分布し、土着種でなく明治あるいはそれ以前に持ち込まれた移入種であるとの説が一般的である(鳥居1996)。里山や人家周辺に生息し、自分で巣穴を掘ることはないが、人家の天井裏や樹洞、岩穴、タヌキやアナグマの使った穴などを巣穴として利用する。都市環境や人為攪乱環境にもよく侵出している。ほぼ完全な夜行性で、夜間活発に採食行動を行う。メスとその子供からなる群れを作るが、とくに冬季はほかの個体も同一の巣穴を利用し、3~6頭のまとまって群れをつくり、ともに活動することがある。雑食性で、昆虫類、ミミズ、小魚、トカゲ、ネズミ類などの動物類も食べるが、果実食が中心で、さまざまな果実や実を食べる。とくに甘味のある果実類への嗜好が強い。木登りは巧みで、樹上で採食活動を行う。出産期は3~12月と長いが、春と秋にピークがあると考えられている。
富山県内の状況
富山県の分布
富山県では1980年にはじめて富山市(旧細入村)楡原で確認されています。「富山県におけるハクビシンの生息状況(赤座、南部氏,1998)」の報告書の時点で、ほぼ全域に分布が広がっている。
被害形態
農作物の実が熟す収穫期に被害を受ける。樹上で盛んに活動するために防護柵や防除網は効果がない。防鳥網は簡単に噛み切って侵入してしまう。電気柵は有効と考えられるが、枝づたいの侵入を阻止するために、周辺の枝を切り払うことが大切です。
被害状況
野菜では、トウモロコシ、スイカ、キュウリ、カボチャ、トマト、サツマイモなど、いずれも実が熟す食害されるとの報告がある。いずれも実が熟す収穫期に食害を受ける。果実や果樹では、メロン、リンゴ、カキ、モモ、ナシ、ブドウなど、ほとんど実の熟す収穫時に食害を受ける。
富山県内に関しては、スイカなどの野菜やブドウなどの果樹が被害を受けています。
被害防除対策
1.被害防除
ワイヤー式電気柵の設置は有効と考えられる。なお、完全な被害防除柵として、埼玉県農業技術センターの「楽落くん」などの設置方法があります。被害防除がひどい場合は、捕獲なども行う。ただし、捕獲に関しては法的な問題があり、必ず地元の市町村の担当窓口にご相談ください。
2.富山県内の対策状況
富山県内ではハクビシンのための被害防除に、電気柵の設置はほとんど行われていない。しかし、被害がひどい場合は捕獲と共に簡易柵などの設置による被害防除も必要であると考えられる。
3.その他
富山県内では特に家屋の屋根裏へ侵入し、糞や尿により天井にシミや腐食などの被害がでています。まず、侵入されている場合は、屋根裏周辺に出入りしている隙間などないか確認し、隙間をふさいでください(ハクビシンが採餌のため外へ出てから作業すること)。庭木などを利用して、家屋の屋根裏へ侵入していることも多く、家に枝がかかる庭木などは、枝を切ったりする必要がります。もしよく利用する木であれば、幹に爪あとが残っています。捕獲に関しては法的な問題があり、必ず地元の市町村の担当窓口にご相談ください。屋根裏で動物の足跡の音が聞こえる場合は、はやめの対策が必要です。
なお、近年、県内にもアライグマの情報もあるため、混同しないように注意する必要があります。
その他、ハクビシンは天井裏で子育てすることが多くありますが、家屋の下などではタヌキが子育てすることがあります。子育て中の子供を勝手に捕獲等はできません。衛生面など心配な方は、やはり家屋にタヌキが入らないよう工夫してください。
4.写真でみるハクビシンの被害と痕跡
屋根の隙間から屋根裏へ侵入
細い爪痕が木の幹に残る
糞
尿による天井のシミ
タヌキの子ども(クマの子と混同されることがある。)